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個展特集/陶芸家・吉田直嗣 × AELUバイヤー・真子拓也対談


ゆらぎある感情を心がままに映し出す
自然体が心地いい、吉田直嗣さんの器

すっと腰から立ち上がるフォルム、フチのゆらぎ。
洗練された佇まいながらも使い手に寄り添う、親しみやすさを併せもつ。

以前よりお預けいただいている作品にも、今回お届けいただいた作品たちにも共通して感じるのはまるで吉田直嗣という作家本人を投影するような器ばかりであること。

飄々とかろやか、自然体。
そんな吉田さんにお力添えいただき、今回gallery AELU初となる個展を実施する運びとなりました。

昨今の事情により作家在廊が叶いませんが、ぜひ本ギャラリーバイヤー・真子との対談を通して吉田さんの器へと向き合う姿勢やご本人の空気感に触れていただけましたら幸いです。

のびやかに力まず、気分まかせ

真子:さて早速ですが、直嗣さんは陶芸をはじめて何年目になるんでしたっけ。

吉田:(大学の陶芸サークルを)入れると長いですよ。もう24年とか?

真子:すごい。(人生の)半分以上じゃないですか。

吉田:初めて土に触ったのが、大学入ってすぐ19、20歳くらい。今年44歳になりましたから、ほんとに人生の半分以上が粘土生活になっちゃいました。

真子:27歳で独立されて、今年で作家生活17年目に。

吉田:そんななっちゃいましたね。

真子:もしかしたら恥ずかしい話かもしれませんけど、いまや人気作家じゃないですか。

吉田:その自覚が本当になくて。人気作家を見ると「すげえなあ」って普通に思っちゃう。それこそ自分の師匠、いわゆる御大みたいな人から自分よりも若い世代の売れっ子さんもたくさん身の周りにいて。で、あんまりその中で自分の立ち位置ってのもよくわからないんですよ。

真子:そういうものなんですね。

吉田:同業の知人にも不思議がられますよ。「吉田くんってどうやって喰ってるの?」って。あちこちで開催されるグループ展なんかがありますけどそういうのに誘われもしないし、参加もしないので(笑)。

真子:誘われもしないし(笑)。

吉田:そうそうそう。僕クラフトフェアにも出ないので。

真子:そうでしたね。

吉田:みなさんクラフトフェアの横のつながりで誘われるんですよね。でも僕は早い段階でクラフトフェアには参加しないです、って宣言しちゃったので。その時点でかなりいけすかないやつなんですよ(笑)。

真子:(笑)。そんなラフで自然体な直嗣さんですが、まさに手掛ける器も同じように自然体の格好良さがあると思っているんですよ。そういう理由から今回の個展でも「自然体」をテーマに、コンセプトや特別なオーダーをせずにお任せしてみました。

吉田:はいはい。

真子:とはいえAELUでの初個展ということで、何か意識されたことはありました?

吉田:えっとね、あんまりないですね。その時に自分が作りたいものを出すのが僕の基本スタンスで。「〇〇での展示だからこうしよう」ってことは、よほどの要望がない限りしないです。

真子:それは嬉しいです。直嗣さんのその時に作りたいものが手に取れるってことですから。実際今までにお邪魔した直嗣さんの展示でも毎回新しい発見があったんですよ。

吉田:なんか恥ずかしいですね。

真子:もしかしたら見る環境の違いかもしれませんが、その時々の気分なんかが素直に表現された、直嗣さんの自然体なところが器に投影されるからなんだろうなあと今思いました。

吉田:先に(頭の中で)考えちゃうと、あんまり良いのができないんですよ。「これを作ろう」と考えてる時点でもう形が先にあるじゃないですか。じゃあそれを目指してってなると、どこかコピーっぽくなっちゃう。気分の問題だと思うんですけど、新鮮じゃないんですよ。要は飽き性なので(笑)。自分がその時々に面白いと思えるろくろが面白いし、(偶然の中で生まれる)伸びとかも含めて見てください、って言いやすいですね。

真子:気分まかせな感じですか?「よし鉢作ろうかな、碗作ろうかな」って。

吉田:本当にそんな感じ。ろくろを挽きはじめてから形変えたりもするし。

真子:ラフでいいですね(笑)。

器の使い方は本人次第

真子:そういえば昔、寺田美術さんで買った直嗣さんの碗、めちゃくちゃ重宝してるんですよ。

吉田:ありがとうございます。

真子:買う前はただ単純に形のかっこよさと、持ってみて手にしっくりと馴染んだので選んだんですけど。まあ、使いやすいですね。

吉田:それはよかった。使ってもらえると素直にうれしいです。ただ、僕基本的に使い勝手にあまり興味がないんですよね。食器として最低限このくらい使えなければいけないと思うラインが自分の中にあるので。普通に使える程度には形なんかを考えますけど、それよりも優先する部分が他に結構あるんです。……あんまりそういう言い方をするとストイックな感じになりますけど(笑)。全然ストイックではないですよ。同時にいろいろ考えられないってだけなんです。

真子:器は用途にこだわらなくても、と正直僕も思います。反感を買いそうな気もしますけど碗にコーヒーやカフェオレを入れたり、なんならスルメを入れてもいいんじゃないかなと。

吉田:以前僕の抹茶碗を買ってくださった年配の御婦人は飯碗として使っています、とおっしゃっていました。よほどお茶を点てる人じゃなければ抹茶碗なんてあまり触りませんからね。どうせなら日々身近で使うものにちゃんとお金をかけたいと。

真子:わかります、僕も同じ考えですね。

吉田:実際僕が作る器に特殊な形って無いんですよ。結構プレーンなラインで、飯碗ひとつとっても、どこにでも普通にあるような飯碗の中からどのラインを取るかっていうところなので。「飯碗だけどこんな形を作っちゃってほら、面白いでしょ?」ってのとはまた違う。なので基本的にはそんなに使い勝手を外すこともないのかなと思っています。

真子:たしかに。

吉田:言い方悪いけど、使い勝手を考えていると大量生産されるプロダクトと民芸品の間くらいになっちゃうんですよ。

真子:と言うのは。

吉田:程よく丈夫で使いやすいサイズとなると、あまりライン関係なくなっちゃって。意外と100円グッズの器も形は悪くないんですよ。仕上げの問題であって。

真子:うんうんうん。正しい表現かわからないですけど形へのこだわりというか、大事にされているのがよくわかります。そこにも繋がりますが、普段インプットってどうされてますか?あちこちに出かけていろんなものを見られてると思うんですが。

吉田:あんまり意識しないようにしています。これといった引き出しが僕にないので、気になり始めると本当に、ものすごいインプットしちゃうんですよ。

真子:吸収率がすごいんですね(笑)。

吉田:もうすごくて。で、そのまんまアウトプットしちゃう。だから絶対にメモもしないし、基本的に写真も撮らないようにしていて。そのうち気になる部分がぽろっと出てくればいいなあ、くらいの。

真子:なんか残るんでしょうね。そういうのって。

吉田:そうそうそう。だから勝手に残るくらいじゃないとわざわざ入れてもしょうがないし。そのへんはあまり意識的に出したり入れたりって作業はしない。

職人仕事ではない、
陶芸作家としての器の見せ方あそび方

真子:さっきも言いましたけど、直嗣さんの個展の度に僕勝手に新しい発見があるんですよ。だから軸がぶれない範囲内でインプットもアウトプットもしているのかと思ってました。

吉田:インプットするときってアウトプットありきなことが多いじゃないですか。そうするとそもそもの時点でもうアウトプットって決まってるんですよね。それがあんまり面白くなくて。

真子:なるほど。

吉田:僕の仕事の方向性からして、自然と職人仕事みたいにいろんなものがどんどん一様に揃ってきちゃうんですよね。形もどんどん固定されていくし。職人の場合はどんどん作り続けて、ラインを決めて最終的にこれだと決めたら1000個、2000個と大量に同じものを作る仕事だと思うんですけど。

真子:同じものを作るにしても、練度が上がっていくみたいな。

吉田:そうそう。でも僕はあまりその方向にいけないというか。やっぱり職人は職人の凄みがある。僕が真似しても全然及ばないんですよ。だからそこで勝負するんじゃなくて、その瞬間の気分みたいなものを形にしたくて。フォルムの精度というよりも、アウトプットの不確かさが面白く感じられるところ。

真子:はいはい。

吉田:その代わり自分の中で最低限のルールは決めておく。僕にとってそれは食器であること、黒か白かってことになるんですけど。そこ以外は出たとこ勝負というか。出たとこ勝負と言うとすごい投げやりな感じになるけど、まあ、でもだいたい投げやりですよ(笑)。

真子:いい意味で肩の力が抜けてると言うか(笑)。「こんなのできちゃった、面白いじゃん!」みたいなのがあるんですね。

吉田:そう。はじいた器をいじるうちにいい感じになってきて、「これ、かわいくない?」ってアシスタントに聞いて「はい」って言わせちゃうとか(笑)。

真子:なかなか首を横に振りづらいですけれど(笑)。そんな風に意図せず生まれるかたちっていいですね。

吉田:そうそう。やっぱり作家でやっていく以上、毎回面白い見え方でもいいのかなと。

真子:それが自然体につながってくるというか。

吉田:もちろん技術を磨かなくちゃいけないのは大いにあるんですけど。技術頼りだとおそらく伝統工芸の世界に近づくと思うんですよね。僕自身古いものも好きですし、伝統工芸もすごい世界だと思うので、そうした世界の延長でもそれはそれでいいと思うんです。ただそういう人がいる反面、僕みたいなタイプもいるし、もっと違うタイプの作家もいっぱいいる。そういうの全部ひっくるめて陶芸やってる人なんです、やきもの屋ですって言えるその幅の広さみたいなところが今の日本の焼き物業界の面白さだと思うんですよね。

真子:うん、幅広い。

吉田:で、こんだけ幅広くいろんな作家が喰っていける国って絶対他にないので、そういう意味ではかなりラッキーだとも思いますね。

個展作品一覧はこちら


吉田直嗣(よしだ・なおつぐ)
1976年静岡県生まれ。東京造形大学卒業後、陶芸家黒田泰蔵氏に師事。
2003年富士山麓にて独立。白と黒の器を中心に制作する。

Interview : Takuya Manako
Text & Edit : Yuria Koizumi


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